2018年1月29日月曜日

私たちの体のお話会の考え方 ~「みんなちがって、みんないい」~

こんにちは、からだフシギの瀬戸山です。
年始初めの研修会が終わってから、早いものでもう3週間。
あっという間に1月も終わりに近づいてきてしまいました。

今日は、1月6日の研修会で参加者の方から頂いたご質問をきっかけに、私たちメンバーが話し合ったことについて、ここに書かせて頂こうと思います。
 

話し合いのきっかけになった、研修会参加者の方からのご質問は、こういう内容でした。
”(紙芝居の「おとこのこ、おんなのこ」の話について)いまは、必ずしも体の性別と心の性別
が一致しなかったり、男女で分けられる性ではないような色々な子がいると思うの
ですが、そういう子がいる時に、お話会をするときはどうしたらいいですか?”
 
言葉はそのままではないですが、こういった内容のこと。
  

このご質問に対して、からだフシギのメンバーであり、幼稚園教諭をされていた渕さんが、”「みんなちがって、みんないい」という言葉がある通り、からだには一つ正解があるわけではない。人と違っても、個性の一部として捉えてもらえればと思う。”といったことを、答えてくれました。 
確かにそうだなと私も思います。「みんな違って、みんないい」。金子みすずさんの言葉は、名言だなと改めて思います。
 
 

 
また、このご質問を頂いた時、私は、以前お話会で会った女の子から聞かれた質問と、そこでのエピソードを思い出していました。それは数年前に、私たちからだフシギのメンバーが公立図書館に出かけて行って、体のお話会をしたときのこと。  
その日の体のお話の内容は、「骨と筋肉」でした。
 
 
お話会が終わって子どもたちが帰る準備をしていたとき、お話会に参加していた5,6歳の女の子が、じーーっと私の顔を見てきました。私は顔に顔面神経麻痺の症状があって、顔の半分が動きません。顔を動かしたり笑ったりすると、動かない左側が動く右側に引っ張られるので、顔が歪みます。以前から、電車などに乗っていると子どもからじーっと見られることはよくあったので、そんな子どもの様子には慣れていました。
 
 
お話会の後、私の顔をじーっと見ていたその女の子は、しばらくしてから私に近づいてきて、「変な顔」と言った後、「どうしてそういう顔なの?」と聞いてきました。
私は、「どうしてだと思う?」と、質問に質問で返してしまいます。

するとその子は、しばらく考えた後、「きんにく、ないの?」と言いました。
 
 
この日のお話会でとりあげた「骨と筋肉」の話しの中には、「笑った顔も、怒った顔も、筋肉があるからできるんだよ」といったことが書かれています。この女の子はそのことをしっかりと理解していて、私の顔が歪むのは、筋肉がないからだ…と考えたようです。
 
私はそのあと、「筋肉はあるんだけどね、病気で筋肉が半分動かなくなっちゃったの。」と答えたら、その子は「ふーん」と、納得してくれたようでした。
 

私は、自分の顔のことを言われながらも、この女の子の反応を、とてもすごいなと感じていました。何がすごいと思ったかというと、それは二つあります。
まずひとつは、女の子がお話会に参加して、顔が動くのは筋肉のおかげだということについて、ちゃんと分かったという理解力を持っているということ。
もう一つは、私の顔を見て、みんなと違うから「変な顔」と思ったけど、どうしてそうなっているのかを考えたとき、”顔が動くのは筋肉があるおかげ”という知識を持っているから、”筋肉がないからこういう顔なんだ”と、自分で考えたということです。
 


これはもう3,4年ほど前のことで、おそらく質問してくれた女の子ご本人も(いまは小学生でしょうか?)覚えていないようなことかもしれません。それでも、体の知識を持つことが、人との違いを理解するひとつのきっかけになる…そんなことを教えてくれたエピソードのように感じられて、私には、とても印象的な出来事となりました。
 

先日の研修会で、冒頭のご質問を頂いた時も、このエピソードを少しだけお話させて頂きました。

   


 
体はよく見るとみんな一人ひとり違います。目の大きさも、鼻の高さも耳の形も、ほくろの位置も違います。指の形も、肌の色も、よーく見たら、みんなみんな違います。
体の中のように外から見えない場所も、心のように見えない部分も、もともとみんな違っています。

頂いたご質問について、後日メンバーで話をした時、私たちがお話会で伝えている体の話しは、多くの人がそうであるという、ごく一例にすぎない、ということを改めて確認しました。
体のお話をするときは、これが正解だという伝え方ではなくて、紙芝居や絵本に出てくるのは一つの例で、一人一人をよく見るとみんな違う・・・・・。
そういう考え方を持って、お話会を行っていけたらいいという話にもなりました。
 
 
私もこれからは、この考え方をより意識して、お話会を行っていきたいと思っています。
 

 
今回は、研修会で頂いた一つのご質問から、自分たちの活動の方向性について、改めて気づき、振り返る機会を頂きました。どうもありがとうございます。

ぜひ今後も、ご質問やご意見などをたくさん出して頂いて、みんなで一緒に、子どもに体を伝えることについて考えていけたらと思っています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。 

 
 

NPO法人からだフシギ 瀬戸山陽子

2018年1月10日水曜日

第3回「からだせんせい」研修会が終了しました

こんにちは、からだフシギ瀬戸山@年明け最初の投稿です。

2017年は、私たちNPO法人からだフシギに、色々と変化があった年でした。

クラウドファンディングという初の試みに挑戦し、多くの方からご支援を頂きました。
(頂いたご寄付は、5-6歳児への体のお話会に用いる紙芝居(ただいま、印刷準備中♪)の普及に、つかわせていただきます。)

またそれ以外では、神楽坂の高齢者施設でミニワークショップを継続して行ったり、産経新聞に活動を取り上げて頂いたり、「わたしのからだ」8冊絵本が改訂され、販売も開始しました。

さらに研究会としては、学会で13年間の歩みについて発表する機会を頂いたり、コミュニティを巻き込んで活動を広げていく研究に対して研究助成金を頂きました。

教材やお話会に関するお問い合わせも多くいただいております。

今後も「体の知識がみんなのものに」になるまで、活動を続けていきたいと思います。
2018年も、どうぞよろしくお願いいたします。

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そして2018年最初の活動では、、タイトルにもある通り、「からだせんせい研修会」を開催しました。


まずは張り切っている受付担当の三宅さんの笑顔から。




プログラムの最初は、からだフシギ代表の菱沼さんが、活動を始めた経緯や、これまでの活動についてスライドを使って説明をしました。


そして、これまでのお話会の様子を動画で観て頂いた後は・・・・




 

少しの作戦タイムを挟んで、実際に参加者の方々にグループを代表して出てきていただき、皆さんの前で絵本や紙芝居を読んで頂きました。



読んで頂いたのは、「わたしのからだ」8系統の全てのお話です。

「たべもののとおりみち(消化器系)」
「ほねときんにく(運動器系)」
「おしっこのはなし(泌尿器系)」
「すってはいて(呼吸器系)」
「ちとしんぞう(循環器系)」
「おとこのこ、おんなのこ(生殖器系)」
「のうとしんけい(神経系)」
「かんぞうとすいぞう(肝臓と膵臓)」





みなさんそれぞれ読み方に個性がありました!
 


その後は質問タイム。読み方や内容について、皆さんからざっくばらんにご質問を受けます。
頂いたご質問とそこでの答えを一部をご紹介。



Q:紙芝居に出てくる単語が難しいと感じた。子どもたちにどういうふうに伝えたら分かりやすいのか工夫を教えてほしい。

A:言葉だけがでてくると分かりにくいかもしれない。1回だけで分かってもらおうと思っていないので、生活の中でとか、後々「聞いたことがあるよ」くらいに記憶に残ってもらえたらよい。



Q:難しい言葉が続いてしまうと、子どもの集中力が途切れたりしないか。


A:子どもたちは逆に、興味を持って、知らない言葉に集中してくれる気がする。言葉を並べているというより、話しの流れにのっていくので理解してもらえる。紙芝居や絵本は絶大な力があり、子どもたちの気持ちがこっちに向いてくれる。




 


質問に答えてくれたのは、白木さんや、渕さん、菱沼さんです。



子どもに体のことを伝える方法や、体の仕組みそのものなどは、すっきりと綺麗な答えが出るものばかりではないかもしれません。人間の体についてもまだまだ分からないことがたくさんです。。

 
私たちも日頃お話会を行っていて、子どもたちから、答えられない質問をたくさん受けることがあります。また、からだのお話会を行った保育士の方々からも、「紙芝居は読めるけど、質問に答えるのが難しい」というご意見を頂いたこともありました。
 


でも、お話会で子どもたちから受ける質問は、全ての質問にその場で答えなくてはいけないわけではないのかも…と最近思っています。
 


答えられない質問は、宿題にしてもいいし、「どうしてだと思う?」「こうかもしれない、ああかもしれない」と子ども達と一緒に考えてもいい。
 
 

ひとつ正解を得ることが大事なのではなくて、体のことについて気軽に話題にして、いろいろ考えてみることが大事なのではないかと、最近思います。その思いは、個人的には、今回の研修会を経て、ますます強くなったように感じました。







研修会の休憩中には、様々な教材も、実際に手に取って頂きました。


ただもちろんこちらも、様々な教材が全部そろわないとお話会ができないわけではありません。


今回参加者の方からも、「ベースの教材として絵本があるのが良いと思った」と言って頂けたの
ですが、絵本をもとに、それをどのタイミングでどう使うか、他にどんなものを使うか…などは、それぞれの方がやり易いように、自由に行って頂ければいいのかなと思っています。


そしてぜひ、やってみて良いアイディアがあれば私たちにも教えて頂けたら幸いです。


今回ご本人がカメラマン担当だったので写真ナシなのですが、そのあとは、第1回からだ先生研修会の卒業生である倉野さんから、研修会を受けた後、お子さんの保育園でお話会を実演してみてどうだったか…という体験談を話してもらっています。









そして、研修会の最後にはグループディスカッションを経て、グループごとに話した内容を発表をして頂きました。ここではご意見ご感想など、たくさんのフィードバックを頂くことが出来ました。







こちらは最後の集合写真。総勢19名の方が参加してくださって、今回の参加者を合わせて「から
だせんせい」研修会を修了された方は、延べ65名になりました。
 



みなさま、ぜひ身近なところで、色々な方を相手に(もちろん5-6歳児のお子さんでも、大人の方
でも)体のお話をしてみて頂けたらと思います。


参加してくださったみなさま、どうもありがとうございました。

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そういえば、菱沼さんが言っていて気づきましたが、今年はこの活動を始めて15年。生まれた子どもも中学を卒業です。…思えば遠くに来たもんだ。


それでもまだ残念ながら体の知識はみんなの「当たり前」にはなっていないように思います。そ
れどころか、医療技術がどんどん進み、情報もあらゆる方面から入手できるようになり、健康医療の情報に翻弄される人は、もしかしたら15年前よりも増えているかもしれません。
 


ヘルスリテラシーを身に付けて、病気になった時にも自分で主体的にものを決められるように。
その前に、自分の体をよく知って、自分を大事にできるように。

「体の知識をみんなのものに」を合言葉に、私たちは今後も活動を続けていきたいと思います。



引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。


NPO法人からだフシギ 瀬戸山陽子